昭和初期に名古屋駅が笹島交差点北から現在の位置に移転することになった。 　それに合わせて整備された幹線道路が名古屋の市街地を東西に貫く桜通である。

名古屋駅移転に合わせて

戦災復興で拡幅・延長

銀杏並木なのに桜通？

名古屋駅移転に合わせて
	名古屋駅の東口から都心をまっすぐ東に貫く幹線道路が桜通である。この道路は昭和の初期に名古屋駅移転に合わせて整備された道だ。 　元となった道は「桜の町筋」とか「菅原町筋」と呼ばれていた江戸時代からの碁盤割の道で、堀川で行き止まりになる巾3間（5.5ｍ）ほどの狭い道であった。 　整備されるきっかけは、名古屋駅の移転である。それまで笹島交差点の北にあった名古屋駅が現在の地に移転するのに合わせて、都市計画事業と名古屋駅前土地区画整理事業が行われ、そのなかで駅前広場や桜通が整備されたのである。 　昭和12年（1937）に完成し、伏見町以西は道幅が24間（43．6ｍ）、以東は18間（32．7ｍ）で整備され、この時に桜橋が架けられている。しかし、この時に拡幅整備した桜通は大津通までであった。 　道路の整備に合わせて堀川に架けられたのが桜橋。太平洋戦争の時の金属供出で橋灯などは架設時と姿を変えたが、本体は今も昔の姿を伝えている。		『名古屋市街全図』　昭和5年
			『名古屋市街全図』　昭和12年
	改修前の桜通（堀川の東）	建設中の桜通（桜橋東から西方向）	完成時の桜橋、橋灯は今と異なる
	完成した桜通と名古屋駅　　絵葉書 完成した桜通と自動車　『大正昭和名古屋市史』

戦災復興で拡幅・延長
	その後、第二次世界大戦の空襲の激化とともに、このあたりは「防空法」により疎開空地帯に指定され、建物を強制的に取り壊し空地になっていた。 　戦後になり、「復興都市計画街路（幹線）計画」が昭和21年（1946）6月に決定され、この疎開空地帯も利用し、将来の自動車交通普及も見越して伏見町以東を幅員50ｍに拡幅し。東端も現在の名古屋環状線まで延長された。
	『名古屋市復興都市計画図』　昭和20年代

銀杏並木なのに桜通？
	他所から名古屋へ来た人は、桜並木が続く大通りを想像していたのに、いちょう並木なので意外に思う。桜並木がないのに桜通。どうして桜通と名付けられたのだろう。 　この通りは昔「桜の町筋」（さくらのちょうすじ）と呼ばれていた。この通りを東へ行くと本町通と交差する手前南側に天神様を祭る桜天神社がある。かつては周辺には桜が多く花見で賑わった、あるいは神木に桜の古木があったことから「桜天満宮」とか「桜天神」と呼ばれていた。このため、この前の通りが「桜の町筋」と呼ばれるようになり、この「桜の町筋」を拡幅整備した現在の道路は「桜通」と名付けられたのである。
	『元文3年名古屋図』　1738

2022/02/13