名木に由来する
宇 津 木 橋
 新堀川に架かる宇津木橋は、近くにあったウツギの名木に由来してその名が付けられた。




 宇津木橋は欄干にウツギのレリーフが付けられているが、橋の名は近くに大きなウツギの木があった事に由来している。

 『尾張名陽図会』には絵とともに次の記載がある。なお、卯花はウツギの別称である。
 「卯花大樹(うのはなたいじゅ)
 前津の春日のまへより田甫(たんぼ)へ出(いで)□□□かこいの家に、うつぎの大木あり。諸病の痛□□うけるにしるしありとて、小さき絵馬を木の枝にさけおくなり」

 前津の春日神社から田のある方(東の方)へ行くと塀囲の家があり、そこにウツギの大木がある。いろんな病気の痛みに御利益があり、小さな絵馬を枝に掛けるとの趣旨だ。


『尾張名陽図会』

 『前津旧事誌』には、このウツギのことを次のように記している。

 「卯津木は潅木にして高さ一丈(3m)計り。根部より細枝叢生して初夏の交白花を着く。里人の話に昔より大きくも小さくもならずといへど、余程年所をへたる老木也。
 いつの頃なりけん。此家の主あまりに小枝の繁茂せるよりこれを剪定せしに、その夜より俄然歯痛を起し、百方手当てをなせども効なし。よってさる易者に占はしめしに、こはさきに枝を切りたる卯津木の咎なりといふに、驚きて直ちに卯津木の周りに注連を張り、玉垣をめぐらし祭事を営みしに、忽ちにして齒の痛み治しけるより、以来里人の歯痛あるもの茲に詣りて治癒を祈願するに至る。本復の上は籾一升を供へ礼謝をなすといへり。」

 また、『名古屋市史 地理編』の名木及花卉の項目では、次のように書かれている。
 「うつ木は今、中區春日町七十八番地小出太吉の宅地内(門内の東南隅)に在り、株にして、齒の痛み、その他諸病の平癒を祈りて效ありとて、もとは注連を張り、繪馬など掲げられしが、今は楊櫨(うつぎ)神社と號して、小祠を建てたり」

 いろんな書物に取り上げられたウツギだが、現在は無くなっているようで、橋の名にわずかな名残をとどめている。





 2024/06/11