堀川と広小路が交差するところに架かる納屋橋。商店街やビジネス街に取り囲まれ、早朝から深夜まで人波が途切れることが無い。 水辺を巡る遊歩道が平成14年(2002)にでき、川に向いたおしゃれなレストランもオープンして、今名古屋で一番ホットな水辺の街として注目を集めている。 |
納屋橋の誕生 | なぜ、「納屋」橋 | 橋の架け替え | |
大正モダンの納屋橋 | 納屋橋キャラリー |
納屋橋の誕生 |
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納屋橋は、慶長15年(1610)の堀川開削とともに架けられた「堀川七橋」の一つ。城下町から烏森(現:中村区)方面にのびる柳街道があったので架けられたと考えられる。 橋が架けられた頃の広小路は城下町の南の端。当時は決して賑やかな所ではなく、納屋橋よりも美濃街道がとおる伝馬橋のほうが賑わっていた。 古くから架かるよく知られた橋なのに、名前の由来ははっきりせず色々な説がある |
なぜ、「納屋」橋 |
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まず、堀川の西岸に「納屋町」という町名があったから、あるいは魚などを商う何軒かのの「納屋」があったから「納屋橋」になったという説がある。清洲越しがほぼ終わり名古屋の街ができたのは、堀川の開削から数年を経た慶長18年(1613)頃だ。納屋町という名前はあらかじめ誰かがつけた町名ではなく、納屋が多い光景から人々が自然に呼び習わし、それが定着したように思われるが、納屋橋が架けられた慶長15年頃に納屋町の町名がすでに有ったのだろうか。また、わずか数軒の納屋から橋の名が付けられるのだろうか。
もう一つは藩の年貢米を収納した「藩蔵」が橋の南東にあったことから「納屋橋」となったとの説だ。だが昔の地図には「御蔵」と書かれ「納屋」と書いてあるのはまだ見たことがない。武士中心のこの時代、藩財政の基幹をになう年貢米を収めてあった大切な蔵で「蔵」の前に「御」の字までつけて書かれているところを納屋と呼んだのだろうか。「御蔵橋」や「蔵前橋」なら納得できるが? この他にも説もあるが、今では何が本当なのかは解らない。 |
大正モダンの納屋橋 |
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納屋橋といえば橋を支える優美なアーチ、中央にバルコニーのあるどっしりとした鋳物の欄干、大きな石造りの親柱ときらびやかな鈴蘭灯が特徴だ。このような姿になったのは、大正2年 (1913)の架け替えのときである。
明治になり名古屋はこの地方の産業の中心地として発展していった。広小路は明治22年(1889)の東海道線全通により、駅のある笹島と旧市街地を結ぶ幹線道路として拡幅され、27年の中央本線の名古屋乗り入れ、28年の関西線全通により笹島停車場が鉄道交通の中心地になるとともに賑わいを増していた。また、40年には名古屋港が開港場に指定されて世界に向けた貿易港となり、堀川は43年に完成した新堀川とともに、港と市街地を直接結ぶ輸送路としてより一層大きな役割を担うようになった。 |
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このようななか明治44年に納屋橋の改築工事が始まった。 陸上交通と水運の交差する繁華な場所にふさわしい、モダンで風格のある近代的な鋼製アーチ橋が架けられることになった。欄干には、堀川を開削した福島正則の「中貫十文字」や、郷土の三英傑と呼ばれる、織田信長の「木瓜」(もっこ)、豊臣秀吉の「桐」、徳川家康の「葵」の紋が鋳込まれており、名古屋発展のいしずえを築いた先人たちへの設計者の思いを感じる。 この欄干は今の熱田区金山にあった「中島鉄工所」の製作。損得を抜きにしてでも良い物を作ろうと銅器製造の先進地である富山県高岡から職人を呼び寄せ、複雑な形を丹念に鋳出したすばらしい欄干が完成したが、多額の赤字を出しその後倒産することになったという。 |
納屋橋設計図 |
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大正モダンが薫る納屋橋も、老朽化と自動車交通の増加により昭和56年 (1981)に拡幅して架け替えられた。 新しく現代風の橋を架けたほうが費用的には安く造れるが、名古屋の代表的な橋として親しまれてきた納屋橋の濃厚な雰囲気がなくなることを惜しみ、できるかぎり旧橋の姿を残すことになった。欄干は以前の橋で使われていたものを補修して再び利用され、今の橋はアーチ部が無くても十分な強度がある桁構造だが、以前の面影を伝えるため再び作り直したアーチが飾りとして付けられた。 重々しくきらびやかな納屋橋は、平成元年に名古屋市の「都市景観重要建築物等」に指定され、橋の東に建つ登録文化財の「旧加藤商会ビル」とともに、堀川と広小路に歴史と文化の味わいと華を添えている。 |
納屋橋ギャラリー |
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堀川を開削した 福島正則の紋(中貫十文字) |
優美なアーチと重量感が、レトロで魅力的 | 信長・秀吉・家康の紋 |
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欄干を制作した 中島鉄工所の銘板 |
夜のとばりが降りると、独特の風情 |
重量感のある石の親柱と きらびやかなスズラン灯 |
2021/05/08 改訂 |
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