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東側が開けて眺望が良い富士見原では、「三尊拝」(さんぞんはい)という月見が行われていた。
『尾張年中行事絵抄』の解説は大略次のような内容である。
上弦の月(下側が弓なりに輝いている月)が出るときに、月の中央部が山に遮られて左右に月の端が見え、その上に星が出ると、三尊仏のように見える。「廿六夜待」といって、これを見物に出る人が多い。
三尊拝は江戸では7月に行われるが、名古屋では1月・5月・9月の年3回ある。1月は寒いのであまり人出がない。5月は夕涼みを兼ねて人出が多いが、夕立雲が山にかかる事が多く月の出が見えにくい。9月が三尊拝には一番良いが、少し油断をすると月が全部出て三尊に見えず拝む事ができない。
『年中行事絵抄』にはその光景を描いた絵が収録されている。高台の富士見原では筵を敷いて料理を詰めた重箱が置かれ、瓢箪からお酒をついでいる。月見酒を飲みながら三尊が現れるのを待とうという趣向だ。東に広がる田の畦にも、たくさんの人が月の出を待っている。
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