下町の暮らしを見守る
貞養院の延命地蔵

 幅下公園の北にひときわ目を引くお地蔵さんが立っている。貞養院の門前である。道路に面してすっくりと立ち、横には三十三観音が並んでいる。いつも香華を手向けられ、人々の暮らしと強い縁を持っている石仏たちである。




 貞養院は、元は東の寺町(地下鉄新栄駅の西側地域)にある西蓮寺の江戸時代初期に創建された塔頭だが、明治16年(1883)2月にここへ移転してきた。善光山の山号を持つ浄土宗の寺である。
 大正4年(1915)刊行の『名古屋市史 社寺編』には、343坪の境内を持ち本堂・鐘楼・門があると書かれているが、戦後の戦災復興土地区画整理事業で現在の姿に変わった。

 公園に面して立つ大きな地蔵は、柔和なまなざしで右手に錫杖を携えているが、信者の寄進した色とりどりの千羽鶴が近くに掛けられて、華やかな落ち着きを感じさせる。
 大きなお地蔵さんの横にもたくさんの石仏が並んでいて圧巻だ。軒端に延命地蔵尊と書かれたたくさんの提灯が掲げられ、中央にお地蔵さんと十一面観音像、左右を取りまくのは三十三観音である。
 姿や表情はそれぞれ異なるものの揃いの前垂れを掛けられ、香炉の灰は清められて線香が立っている。
 日々ここにお参りし、お守りしている方がいるからこその姿である。

 このあたりには、昔からの家も残っている。名古屋下町の生活と信仰がうかがわれるお地蔵さんである。









 2022/12/13