東海道の南にあった
旧熱田駅
 明治19年、熱田駅が開業した。名古屋で最初の鉄道駅である。場所は今のところではなく、東海道と東海道線が交差する南側であった。




 熱田駅は、明治19年(1886)3月1日に開業した名古屋で最も古い駅だ。

 明治5年(1872)に新橋と横浜を結ぶ鉄道が開通したのをかわぎりに、関東や関西で徐々に鉄道が整備されていった。そのなかで大きな課題が、関東と関西を結ぶ幹線鉄道の建設である。東海道ルートか中山道ルートか色々意見はあったが、明治16年(1883)に中山道ルートでの建設に着手した。
 鉄道建設に使う資材を輸送する必要があるが、水深の浅い熱田港では陸揚げできず、天然の良港であった武豊港で陸揚げして鉄道で運ぶことになった。このため18年(1885)8月から武豊と熱田の間の線路敷設工事が始まり、翌年3月に開通して熱田駅が開業した。駅が設けられたのは東海道と鉄道が交差する地点の南で、鉄道輸送と道路での輸送の結節点として便が良いからである。
 熱田駅が開業した4か月後の19年7月に、中山道ルートは予想以上に工費と期間が必要なことが判明して東海道ルートに変更され、大府駅以北の線路は東海道線に組み込まれた。

 明治22年(1889)に東海道線が全通して利用者が増えてくると、それまでの駅では狭くて不便をきたすようになってきた。このため29年(1896)2月に約1㎞北の今の場所に移転し拡張された。


『名古屋明細地図』 明治19年

1/20000 明治24年




 2023/07/09