清流だった 江戸時代 | なぜ 清流だったのか | 明治~戦前 汚濁始まる | |
高度成長 汚濁の悪化 | 再び清流に |
戦後の高度成長と 汚濁の悪化 |
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◇戦災復興と高度成長…… 戦争の終了とともに、焼け野原になった町の復興が始まった。食べるものも着るものも住むところも無いなか、人々は生きるために必死になって働いた。堀川の水質より、日々の暮らしで精一杯であった。日本中がそうであった。 努力のかいあって日本経済は高度成長の波に乗った。低価格を武器に大量生産する世界の工場となり、神武景気・岩戸景気と呼ばれるかつてない好景気を経て経済は拡大していった。生活水準も向上し「消費は美徳」という言葉も生まれた。 |
焼け野原となった名古屋(栄・広小路付近) 『新修名古屋市史』 |
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◇日本各地で公害発生 だが、大量生産・大量消費の華やかな社会の裏面で、人知れず公害が広がっていた。 昭和30年(1955)代になると、それまで「風土病」とも言われた熊本の「水俣病」や富山の「イタイイタイ病」などが、工場排水による公害病ではないかとの説がでてきた。 堀川の水や魚は利用されていなかったので公害病は発生しなかったが、真っ黒な水が流れ、鼻を突く臭いは川岸だけでなく沿川地域に広がっていた。このようななか、名古屋市は38年(1963)に河川浄化係をつくり、水質の測定や庄内川から堀川への試験通水などの浄化事業に取り組み始めた。 |
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◇最悪期の堀川と水質の改善 昭和40年(1965)代になると水質・大気・地盤沈下など様々な公害に反対する市民運動が全国各地で激しく繰り広げられ、川の水質に関心がもたれるようになってきた。 堀川もこの頃が一番水質の悪い時期であった。41年のBODは54.8mg/ℓ……今では信じられないような数字がでている。まさに死の川である。42年に堀川の清掃で回収されたごみの量は915㎥、こも類751枚、犬など動物死体1,443体など膨大な量であった。 |
すさまじかった昭和40年代の水質 |
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◇急速な改善とその後 昭和46年(1971)に水質汚濁防止法が施行された。一部からは国際競争力が低下し日本の産業が衰退することを危惧する声もあったが、排水規制が始まった。 堀川では40年(1965)からヘドロの浚渫が始まり、名城・千年下水処理場が完成して下水は全て処理してから堀川に流されるようになり、急速に水質が改善していった。50年(1975)代になるとBODが10mg/ℓ以下になり、回収されたごみの量も57年(1982)には塵芥336㎥、こも類21枚、動物死体131体にまで減ってきた。 その後は多少下降気味ではあるものの大きな改善は無く、令和2年度に納屋橋で6回行われた調査では、BODが1.6~5.5㎎/ℓである。 |
黒川(堀川上流部)での浚渫風景 昭和41年頃 |
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◇水質改善と河川環境の整備 堀川の一番の弱点は水源がない事である。下水処理場の排水が水源のほとんどを占めている。 堀川に新鮮な水を流す木曽川導水事業計画が昭和58年(1983)に始まったが、水利権などの問題から進捗せず平成12年(2000)に中止された。また63年(1988)になると「マイタウン・マイリバー整備事業」が始まった。老朽化した護岸を改築し、可能なところでは川岸に遊歩道を設けるなど水辺環境を改善するとともに、水質浄化のためのヘドロ除去がすすめられている。 |
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このようななか平成10年(1998)から3年間、地下鉄工事の地下水が堀川へ排水され、上流部の黒川が山奥の清流のような水質になった。オイカワは水面が黒くなるほど群れ、底の砂をすくうと蜆がたくさん取れ、清流にしか生えない水藻も見られた。 工事の終了とともに地下水は放水されなくなり、環境の大幅な悪化が懸念された。このため、庄内川から毎秒0.3㎥通水が行われるようになり、庄内川から通水できないときは守山区内にある瀬古の井戸から0.02㎥、さらに古川からもわずかな水量ではあるが水を補充するようになった。 平成13年には水質改善策を検討する「清流ルネッサンスⅡ」が始まり、中流域ではBODが5 mg/ℓ以下、DOが5 mg/ℓ以上とする目標が掲げられている。 |
地下鉄工事の地下水放流で清流に (平成13年頃) |
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具体的には河川と下水の施策が進められている。 河川の施策として、浅井戸からの地下水放流、溶存酸素を増やすための流水へのエアレーション(空気補給)、浮遊するゴミを自動的に除去するゴミキャッチャーの設置、川に淵や瀬を造ることで自浄能力の向上、芦などを植えて景観向上と水中のリンなどの除去などが行われている。 下水は合流式のため、雨が降ると余水吐から堀川へ生下水が排出されるが、吐き口の堰のかさ上げや滞水池への汚水の貯留などによる改善を進められている。また、下水処理の高度化により処理水の改善も行われている。 |
2005/03/14・2021/06/16改訂 |
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